2023/12/16 19:50

アトリエフッカと同じ建物内には、お菓子とパンをつくっている「渋谷まる福」があって、毎日おいしいにおいを漂わせているんだけれど、そこである日イシヅカボスが、とってもいいものを見つけてしまった。「空になった小麦粉袋、フッカでつかえるじゃない!」。これまで捨てられていた業務用小麦粉袋をせっせとアトリエに運ぶ。まる福のみんなは不思議そうに眺めていたけれど。


小麦粉袋には魅力と可能性がある。何キロもの小麦粉を遠方に運んでも耐えうるその丈夫さもそうだけど、イラストを描いたりペイントしやすいという、「紙」ならではの魅力。米や小麦粉などの原料袋をアップサイクルした商品のなかには、袋に書かれた商品名やロゴをあえてそのまま生かしたタイプのものもあって、それはそれでイイと思うんだけど、フッカで作るからにはやっぱりフッカのアートをほどこさなければ面白くないよね。


袋についていた粉をきれいにふいて、アイロンでプレスすると、それはまるで大きなキャンバスに。そうなったらもうこっちのもんってなわけで、フッカのごきげんなパターンメーカー・アビィの登場だ。□や〇といった図形や文字をスピーディに繰り返し描くことを得意するアビィは、毎日スタッフと一緒にたくさんのパターンを描き続けていくんだけど、気が付いたらそれがどんどんアトリエ内に溜まってしまっていて。ずっとアビィのパターンを何かに活かしたいと考えていたんだけど、あ。小麦粉袋に描けばものづくりの素材になるんじゃない?というイシヅカボスのヒラメキが、「コムギコシリーズ」の原点となった。


アビィを中心に、小麦粉袋にイラストや文字を描き、ペイントしていく。それはまるでオリジナルの生地を作るかのよう。そんなふうにしてできた"コムギコ生地"で「さぁ何か作ろうぜ!」と、"小麦粉袋大作戦" が本格始動したのは2021年の夏ころ。


さあさて、何を作ろうか?やっぱりバッグかな?と、まずはトートバッグの試作が始まった。縫製を得意とするフッカだけど、紙にミシンをかけるのは初めてで、みんな最初はどきどきするんだけど、コツコツコツコツと縫っていった。


大きさはどれくらい?強度はどうなんだろうか?と、いろんな大きさ、かたちで試作したし、内布をつけてみたりもした。缶ビールをたくさん入れて持ち歩き、強度を確かめるフッカーもいた。そんなふうに試作を重ねながら、少しずつバージョンアップさせ、少しずつラインナップを増やしていったのが「コムギコシリーズ」。


アビィが絵を描き、別のメンバーが製品へと仕上げていく。それぞれの得意×得意をかけあわせるという、フッカー同士のコラボワーク。そもそもアビィのアートワークは、スタッフや近くにいたフッカーたちと一緒に描いてるし、こうしたコラボはもちろんこれまでも行われてきたけど、フッカの定番・看板商品を協働でつくりあげることの意味は、とても大きかったと思う。


だんだんと慣れてきてからは、ときどき別のメンバーも"コムギコ生地"の制作をしたりもする。筆やスポンジでポンポンと絵の具をうちつけて描く「ポンポン」柄は、手にしびれがあるフッカーも無理なくできる作業。


バッグから始まって、ブックカバー、スナックバッグ(現:フリーパック)、ワインバッグ、カードケースなどなどいろんな商品に展開していったけど、何かをつくるときには必ずハギレがでる。どうしたって、でる。フッカには「ハギレをむだにしないおとこ」ミスター・ミワがいるから、彼のハギレ回収ぶくろにそっと入れたりするけれど、大量のハギレはミスター・ミワだけじゃ背負いきれない。


だから、こんなふうに、コムギコのハギレをいかして何か必要なものをつくる、ってのが、フッカではあたりまえの光景になっていった。ある日フッカに遊びにきたお客さんが言ってたよ、「あちこちにコムギコでつくったものがある!!」。


そしてついに、コムギコハギレで新たな商品も生みだした。アップサイクルのアップサイクル。ただのハギレじゃちょっとつまらないけど、アップサイクルブランド sAtoさんとのものづくりからヒントを得て、金糸を使ってみることに。すると、気ままなアビィのアートワークが、まるで伝統工芸品のようになるのだから不思議。


まだまだいろんなアイデアがあるから、これからもコムギコシリーズは進化していく。楽しくなっていく。別にエコしたいわけじゃなくって、面白いんだよね。あの小麦粉袋がこんなふうになるなんて。ただそれだけ。